結論
補助金は消費税の課税対象外ですが、補助金で買った設備の消費税は仕入税額控除できます。このままだと国が二重に負担するため、補助金のうち消費税にあたる部分はあらかじめ減額するか、あとで返還する決まりになっています。入金のあと、消費税の申告が終わった段階でも報告が必要になる場合があります。
なぜ「消費税分を返す」話になるのか
国税庁は、国や地方公共団体からの補助金を、消費税の課税対象とならない取引(不課税)の例に挙げています。補助金を受け取っても、売上のように消費税はかかりません。
一方で、補助金で支払った設備代の消費税は、通常の仕入と同じく控除の対象になり得ます。愛知県の資料では、この状態を「補助金を交付して消費税を還付することになり、重複して支給している」と説明しています。その調整として、補助金に係る仕入控除税額の返還が求められます。
国の補助金では、3つの場面で調整される
中小企業省力化投資補助金の交付規程を例に、どこで消費税分が差し引かれるかを整理します。中小企業新事業進出補助金の手引きでも、課税事業者(免税事業者・簡易課税事業者以外)は消費税分を原則としてあらかじめ補助対象経費から減額する、と案内されています。
| 場面 | 交付規程の定め | 実務での意味 |
|---|---|---|
| 交付申請 | 消費税等仕入控除税額を減額して申請する(第7条第2項) | 最初から消費税分を除いた額で申請する |
| 実績報告 | 仕入控除税額が明らかな場合は減額して報告する(第18条第3項) | 申請時に分からなかった分を、ここで差し引く |
| 申告後の報告 | 申告で仕入控除税額が確定したら、様式第5で速やかに報告する(第21条第1項) | 入金後でも、差額があれば返還を命じられる |
申請時に仕入控除税額が明らかでない場合は、額の確定時に減額する条件を付けて交付決定する、とも定められています(第10条第3項)。多くの会社では、申請や実績報告の段階で消費税分を除いて計算しています。それでも差額が残った場合に備えたのが、3つ目の報告です。
返還を命じられたら、期限は20日
第21条の返還には、額の確定後の返還と同じ規定が準用されます。期限と延滞金は次のとおりです。
| 返還の期限 | 返還命令の日から20日以内 |
|---|---|
| 期限を過ぎた場合 | 未納額に年利10.95%の割合で延滞金 |
| 報告書の主な記載 | 確定した補助金額/確定時の仕入控除税額/申告で確定した仕入控除税額/差額(返還相当額) |
報告書には積算の内訳を別紙で添付するよう求められています。顧問税理士の申告書と付き合わせる作業になるため、申告の時期に合わせて準備しておくと慌てません。
入金のあとに、手元にそろえておきたいものは次のとおりです。
- 交付決定通知書と、額の確定通知書
- 実績報告で提出した経費の明細(税抜・税込の区別がわかるもの)
- 補助事業を実施した課税期間の消費税の確定申告書
- 課税売上割合や控除対象仕入税額の計算表
返還が0円になる会社もある
愛知県の資料では、次のいずれかに当たる場合は仕入控除税額が0円で、返還は不要としています。ただし、0円でも報告書の提出は必要とされています。
- 消費税の確定申告の義務がない(例:基準期間の課税売上高が1,000万円以下)
- 簡易課税方式で申告している
- 公益法人等で、特定収入割合が5%を超えている
- 個別対応方式で、補助対象経費の消費税を「非課税売上のみに要するもの」として申告している
- 補助対象経費のすべてが人件費などの非課税仕入である
年商1億円を超える会社の多くは、原則課税で申告しています。この場合は返還額が出る可能性があるため、「うちは関係ない」と決めつけないことが大切です。
返還額の計算は、申告方法で変わる
同じ資料では、課税売上割合と申告方法によって計算式が分かれると案内されています。代表的なものは次のとおりです。
| 会社の状況 | 仕入控除税額の計算 |
|---|---|
| 課税売上割合95%以上、かつ課税売上高5億円以下 | 補助金額 × 10/110 |
| 上記以外で、一括比例配分方式 | 補助金額 × 課税仕入の割合 × 課税売上割合 × 10/110 |
| 上記以外で、個別対応方式 | 課税売上対応分と共通対応分に分けて計算し、合計する |
これは消費税込みの経費に補助金が充てられた場合の考え方です。最初から税抜で申請している国の補助金では、差額が出ないことも多くあります。どちらに当たるかは、交付決定通知と実績報告の数字で確認できます。
期限は制度ごとに違う
国の交付規程は「速やかに」と定めています。自治体の補助金では、広島県のように「補助事業完了日の属する年度の翌々年度の6月30日まで」と期限を区切っている例もあります。複数の補助金を受けている会社は、制度ごとに期限と様式を一覧にしておくと安全です。
当事務所では、実績報告から入金後の各種報告まで、交付規程に沿って必要な手続きを整理します。税額の計算そのものは顧問税理士の方と分担し、事務局への報告書の作成と提出を担当します。
関連ページ:採択後の手続き代行/採択はゴールではない/補助金が入った期の税金と、圧縮記帳の使いどころ
出典
- 中小企業省力化投資補助金交付規程(独立行政法人中小企業基盤整備機構)
- 補助事業の手引き(中小企業新事業進出補助金事務局)
- No.6157 課税の対象とならないもの(不課税)の具体例(国税庁)
- 仕入控除税額(補助金返還額)の計算方法・報告書類について(愛知県)
- 補助金にかかる消費税及び地方消費税の仕入控除税額報告書について(広島県)
制度の内容・金額・締切は変更されることがあります。申請前に必ず最新の公募要領をご確認ください。