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補助金と税制

補助金が入った期の税金と、圧縮記帳の使いどころ

/ 執筆:行政書士 後藤 和樹

結論

補助金は、受け取った事業年度の収益(益金)になります。設備の取得に充てた補助金であれば圧縮記帳で課税を繰り延べられますが、使えるのは「返還を要しないことが確定した事業年度」だけです。経費に充てた補助金は対象になりません。

採択後の手続きのご相談で、入金の見通しが立った頃に必ず出てくるのがこの話です。「1,500万円が入ってくるが、そのまま利益になるのか」。答えは、何もしなければそうなります、です。

補助金は返さなくてよいお金です。税務では、その分だけ会社が儲かったと見ます。設備の代金は減価償却で何年かに分けて費用になるのに、補助金は入った年に一度で収益になる。このずれが、思わぬ税負担になります。

なぜ、入った年に税金の話になるのか

数字で見ると分かりやすいです。3,000万円の機械を買い、1,500万円の補助金を受けたとします。機械の耐用年数が10年なら、その年に費用になるのは減価償却費の300万円ほどです。

その年に出てくるもの金額の例
補助金の収益1,500万円
機械の減価償却費約300万円
差引き(課税される利益)約1,200万円

数字は仕組みを説明するための例です。実際の金額は耐用年数・償却方法・事業供用の時期によって変わります。

補助金は後払いなので、設備代はすでに自己資金か借入れで払い終えています。現金は出ていったのに、利益だけが立つという状態です。ここに税金がかかると、資金繰りが苦しくなります。

圧縮記帳が使えるのは、どういう補助金か

この不都合をならすための仕組みが圧縮記帳です。法人の場合、根拠は法人税法第42条(国庫補助金等で取得した固定資産等の圧縮額の損金算入)です。個人事業の場合は所得税法第42条で、補助金のうち固定資産の取得に充てた部分を総収入金額に算入しない扱いになります。

ただし、どんな補助金でも使えるわけではありません。ここを取り違えているご相談が多いところです。

補助金の使いみち圧縮記帳
機械・設備・建物などの固定資産の取得や改良に充てた対象になります
広告宣伝費・人件費・旅費などの経費に充てた対象になりません(経費補助は対象外と案内されています)

設備投資の補助金であっても、補助対象経費のなかに外注費や広報費が混ざっていることはよくあります。圧縮記帳できるのは、あくまで固定資産の取得に充てた部分です。交付決定額をそのまま圧縮できるとは限りません。

もうひとつの要件は申告です。確定申告書に所定の明細書を添付し、必要な事項を記載することが条件とされています。決算のときに申し出ていなければ、後から使える性質のものではありません。

いつの事業年度で使うのか

ここが実務でいちばん間違いやすいところです。圧縮記帳を使えるのは、その補助金について「返還を要しないことが確定した」事業年度です。入金された年度、ではありません。

国税庁の法人税基本通達では、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律第15条の規定により補助金の額が確定し、その旨の通知を受けたものが、返還を要しないことが確定した国庫補助金等に該当するとされています。実務で言えば、実績報告の検査が終わり、額の確定通知が届いた時点です。

  1. 交付決定を受け、発注・納品・支払いを済ませる
  2. 実績報告を提出し、事務局の検査を受ける
  3. 補助金額の確定通知が届く(ここで返還不要が確定します)
  4. 入金される

設備は今期に入れたのに、確定通知は来期になる。補助金ではごく普通に起きる流れです。この場合、今期の決算では返還不要が確定していないため、圧縮記帳ではなく法人税法第43条の特別勘定を設ける方法で経理する扱いが用意されています。いったん預かり金のように扱い、確定した年度に圧縮記帳へ振り替えるイメージです。

なお、交付条件に違反したら返還する、一定期間内に相当の収益が生じたら返還する(収益納付)といった一般的な条件が付いていること自体は、返還不要が確定したかどうかの判定には関係しないと通達に示されています。「収益納付の条件があるから、まだ確定していない」とは考えません。

圧縮記帳をすれば、税金は減るのか

減りません。圧縮記帳は課税の繰延べです。免税ではありません。ここを誤解したまま資金計画を立てると、数年後に足りなくなります。

仕組みはこうです。補助金の額だけ固定資産の帳簿価額を下げるので、その年の収益は打ち消されます。その代わり、税務上の取得価額が下がるため、翌期以降の減価償却費も減ります。払う税金の合計は変わらず、払う時期が後ろにずれるだけです。

それでも意味があるのは、お金が出ていった年に税負担を集中させないという点です。補助金は後払い、設備代は先払い。この時間差を埋めるための仕組みだと理解しておくのが実務的です。

経営力向上計画の即時償却とは、どう並べるのか

設備投資では、補助金とは別に税制の優遇も使えます。経営力向上計画の認定を受けて対象設備を取得した場合、中小企業経営強化税制により即時償却か税額控除を選べます。

項目国税庁が案内している内容
対象青色申告書を提出し、中小企業等経営強化法の認定を受けた特定事業者等
特別償却取得価額から普通償却限度額を差し引いた金額を償却(即時償却)
税額控除取得価額等の7%。特定中小企業者等は10%(資本金3,000万円超の法人は10%の対象から除かれます)
期限令和9年3月31日までに取得等をして、指定事業に使うこと

補助金を受けた設備でも、この税制の対象になります。ただし圧縮記帳の適用を受けた場合は、圧縮後の金額が税務上の取得価額になると案内されています。即時償却の額も税額控除の額も、圧縮後の金額をもとに計算されるということです。

順序にも注意が必要です。経営力向上計画の認定は、原則として設備を取得する前に受けておく必要があります。補助金の採択を待ってから動くと、間に合わないことがあります。適用期限が令和9年3月31日までとされている点も含め、2027年3月までに設備を入れる予定なら、いまが計画をまとめる時期です。

税制の適用期限や要件は改正されることがあります。申告の直前ではなく、投資を決める段階で最新の内容をご確認ください。

いつ、誰に相談すればよいか

相談のタイミングは2つあります。ひとつは投資を決める前。補助金をどの制度で狙うか、経営力向上計画を出すかを、設備の取得前に決める必要があるからです。

もうひとつは実績報告が終わり、額の確定通知が見えてきた頃です。どの事業年度で圧縮記帳を使うか、特別勘定を立てるかは、決算を締める前に決めておかないと選べません。

当事務所は税務代理を行いません。税額の計算と申告は顧問税理士の先生の担当です。当事務所が担うのは、補助金の申請と採択後の手続き、経営力向上計画などの認定申請、そして額の確定通知がいつ出るかの見通しを税理士の先生に渡すことです。この連携が抜けると、確定通知の時期を知らないまま決算を締めてしまいます。

交付決定の通知と補助対象経費の内訳をお見せいただければ、どこまでが固定資産の取得に充たるのか、確定通知はいつ頃になるのかをご説明できます。他社で申請した案件でも構いません。費用はご相談時にお伝えします。

関連ページ:補助金と税制採択後の手続き代行採択はゴールではない

出典

制度の内容・金額・締切は変更されることがあります。申請前に必ず最新の公募要領をご確認ください。

執筆

行政書士 後藤 和樹

後藤行政書士事務所 代表(行政書士 登録番号 25082067)。設備投資の1年前から、補助金の申請・採択後の手続き・入金までを伴走支援しています。

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