結論
ものづくり補助金は、入金で終わりではありません。補助事業の終了後、5年間で合計6回の事業化状況報告が求められます。報告が未入力のままだったり、賃上げの目標に届かなかったりすると、補助金の返還を求められることがあります。
採択後の手続きのご相談で、入金から1〜2年たった会社からよく届くのがこの話です。「事務局からメールが来たが、何を出せばよいのか分からない」。申請を担当した人が退職していて、ログインの方法すら分からないという例もあります。
この記事では、ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(ものづくり補助金)の事業化状況報告を取り上げます。2026年度から新事業進出補助金と統合されましたが、これまでの公募回で交付を受けた会社の報告は続いています。
事業化状況報告は、いつ・何回あるのか
事務局は、全ての補助事業者に対し、補助事業の終了後5年間にわたり合計6回の報告を求めると案内しています。報告は毎年4月1日から5月31日までの間に行います。
初回がいつになるかは、会社ごとに違います。起点は入金日ではなく補助金の額が確定した日です。事務局のよくある質問では、額の確定日を含む決算年度を「計画1年後」、その1年前の決算年度を「基準年度」として扱うと説明されています。
| 項目 | 事務局の案内 |
|---|---|
| 回数 | 補助事業の終了後、5年間で合計6回 |
| 報告の期間 | 毎年4月1日〜5月31日 |
| 確認の時点 | 毎年3月末時点で把握できる内容 |
| 提出の方法 | 事業化状況・知的財産権等報告システム(GビズIDプライムでログイン) |
ご自身の報告がいつから始まるかは、額の確定通知の日付と決算期で決まります。手元の確定通知を確認してください。
何を報告するのか
報告するのは、補助事業の成果がどれだけ売上につながったかと、賃上げの状況です。公式サイトでは、次の5つを報告するよう案内されています。
- 事業化状況・知的財産権等報告書
- 事業化状況等の実態把握調査票
- 返還計算シート
- 直近の決算書
- 報告年3月分の賃金台帳
決算書は、報告年の前年3月から報告年の2月までの間に確定したものを使います。添付するのは損益計算書、製造原価報告書(作成している場合)、販売費及び一般管理費の明細です。
賃金台帳は3月分です。4月に昇給した場合でも、3月の賃金で報告するよう案内されています。事業場の全従業員の台帳と、最低賃金で働く人1名分の台帳の2種類が必要です。
どんなときに返還になるのか
返還につながる場面は、大きく分けて次のとおりです。いずれも、報告の中身から判断されます。
| 場面 | 事務局の案内 |
|---|---|
| 報告を出さない | 「未入力」や、完了ボタンを押さず「入力中」のままの場合は返還対象 |
| 事業場内最低賃金が届かない | 毎年3月末時点で地域別最低賃金+30円に届かない場合、補助金額を事業計画年数で割った額の返還 |
| 給与支給総額の目標が届かない | 増加目標が達成できていないと認められる場合は返還 |
| 成果で収益が出た | 補助金額を上限に、その一部を収益納付 |
最低賃金の判定は「3月末までに」です。「4月1日以降に」上げても間に合いません。地域別最低賃金は毎年のように改定されるため、改定後の額に30円を足した水準を、翌年3月までに全従業員で満たしているかを確かめる必要があります。
返還が免除される規定もあります。19次以降の公募回では、付加価値額が増加しておらず、かつ企業全体で営業利益が赤字の場合や、天災など事業者の責めによらない理由がある場合は、一部返還を求めないとされています。適用されるかどうかは公募回ごとの要領で確認します。
いつ準備を始めればよいか
報告の期間は4月と5月ですが、準備は秋から始めるのが実務的です。理由は、3月の賃金と3月までの決算が、報告の中身をほぼ決めてしまうからです。
- 最低賃金の改定時:都道府県の改定額と発効日を確認し、+30円を満たしているか点検する
- 年明け〜3月:3月分の賃金で最低賃金の条件を満たせるよう、時給や手当を調整する
- 3月:GビズIDプライムのログインと、報告システムの担当者を確認する
- 4月〜5月:決算書と賃金台帳をそろえ、報告を入力して完了まで押す
当事務所では、額の確定通知・交付申請の書類・直近の決算書をお見せいただければ、何回目の報告か、どこに返還のおそれがあるかをご説明します。他社で申請した案件でも構いません。費用はご相談時にお伝えします。
関連ページ:採択後の手続き代行/採択はゴールではない/補助金で買った設備は、勝手に売れない
出典
- 事業化状況報告(ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 公式サイト)
- よくあるご質問【事業化状況・知的財産権等報告書】2025/8/29版(ものづくり補助金事務局)
- 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金(中小企業基盤整備機構)
制度の内容・金額・締切は変更されることがあります。申請前に必ず最新の公募要領をご確認ください。